法例
(明治31年6月21日(法律第10号))
第1条 法律ハ公布ノ日ヨリ起算シ満二十日ヲ経テ之ヲ施行ス但法律ヲ以テ之ニ異ナリタル施行時期ヲ定メタルトキハ此限ニ在ラス
台湾、北海道、沖縄県其他島地ニ付イテハ勅令ヲ以テ特別ノ施行時期ヲ定ムルコトヲ得
第2条 公ノ秩序又ハ善良ノ風俗ニ反セサル慣習ハ法令ノ規定ニ依リテ認メタルモノ及ヒ法令ニ規定ナキ事項ニ関スルモノニ限リ法律ト同一ノ効力ヲ有ス
第3条 人ノ能力ハ其本国法ニ依リテ之ヲ定ム
外国人カ日本ニ於テ法律行為ヲ為シタル場合ニ於テ其外国人カ本国法ニ依レハ能力ノ制限ヲ受ケタル者タルヘキトキト雖モ日本ノ法律ニ依レハ能力者タルヘキトキハ前項ノ規定ニ拘ハラス之ヲ能力者ト看做ス
前項ノ規定ハ親族法又ハ相続法ノ規定ニ依ルヘキ法律行為及ヒ外国ニ在ル不動産ニ関スル法律行為ニ付テハ之ヲ適用セス
第4条 禁治産ノ原因ハ禁治産者ノ本国法ニ依リ其審判ノ効力ハ審判ヲ為シタル国ノ法律ニ依ル
日本ニ住所又ハ居所ヲ有スル外国人ニ付キ其本国法ニ依リ禁治産ノ原因アルトキハ裁判所ハ其者ニ対シテ禁治産ノ宣告ヲ為スコトヲ得但日本ノ法律カ其原因ヲ認メサルトキハ此限ニ在ラス
第5条 前条ノ規定ハ準禁治産ニ之ヲ準用ス
第6条 外国人ノ生死カ分明ナラサル場合ニ於テハ裁判所ハ日本ニ在ル財産及ヒ日本ノ法律ニ依ルヘキ法律関係ニ付テノミ日本ノ法律ニ依リテ失踪ノ宣告ヲ為スコトヲ得
第7条 法律行為ノ成立及ヒ効力ニ付テハ当事者ノ意思ニ従ヒ其何レノ国ノ法律ニ依ルヘキカヲ定ム
当事者ノ意思カ分明ナラサルトキハ行為地法ニ依ル
第8条 法律行為ノ方式ハ其行為ノ効力ヲ定ムル法律ニ依ル
行為地法ニ依リタル方式ハ前項ノ規定ニ拘ハラス之ヲ有効トス但物権其他登記スヘキ権利ヲ設定シ又ハ処分スル法律行為ニ付テハ此限ニ在ラス
第9条 法律ヲ異ニスル地ニ在ル者ニ対シテ為シタル意思表示ニ付テハ其通知ヲ発シタル地ヲ行為地ト看做ス
契約ノ成立及ヒ効力ニ付テハ申込ノ通知ヲ発シタル地ヲ行為地ト看做ス若シ其申込ヲ受ケタル者カ承諾ヲ為シタル当時申込ノ発信地ヲ知ラサリシトキハ申込者ノ住所地ヲ行為地ト看做ス
第10条 動産及ヒ不動産ニ関スル物権其他登記スヘキ権利ハ其目的物ノ所在地法ニ依ル
前項ニ掲ケタル権利ノ得喪ハ其原因タル事実ノ完成シタル当時ニ於ケル目的物ノ所在地法ニ依ル
第11条 事務管理、不当利得又ハ不法行為ニ因リテ生スル債権ノ成立及ヒ効力ハ其原因タル事実ノ発生シタル地ノ法律ニ依ル
前項ノ規定ハ不法行為ニ付テハ外国ニ於テ発生シタル事実カ日本ノ法律ニ依レハ不法ナラサルトキハ之ヲ適用セス
外国ニ於テ発生シタル事実カ日本ノ法律ニ依リテ不法ナルトキト雖モ被害者ハ日本ノ法律カ認メタル損害賠償其他ノ処分ニ非サレハ之ヲ請求スルコトヲ得ス
第12条 債権譲渡ノ第三者ニ対スル効力ハ債務者ノ住所地法ニ依ル
第13条 婚姻成立ノ要件ハ各当事者ニ付キ其本国法ニ依リテ之ヲ定ム但其方式ハ婚姻挙行地ノ法律ニ依ル
前項ノ規定ハ民法第741条ノ適用ヲ妨ケス
第14条 婚姻ノ効力ハ夫ノ本国法ニ依ル
第15条 夫婦財産制ハ婚姻ノ当時ニ於ケル夫ノ本国法ニ依ル
第16条 離婚ハ其原因タル事実の発生シタル時ニ於ケル夫ノ本国法ニ依ル但裁判所ハ其原因タル事実カ日本ノ法律ニ依ルモ離婚ノ原因タルトキニ非サレハ離婚ノ宣告ヲ為スコトヲ得ス
第17条 子ノ嫡出ナルヤ否ヤハ其ノ出生ノ当時母ノ夫ノ属シタル国ノ法ニ依リテ之ヲ定ム若シ其夫カ子ノ出生前ニ死亡シタルトキハ其最後ニ属シタル国ノ法律ニ依リテ之ヲ定ム
第18条 子ノ認知ノ要件ハ其父又ハ母ニ関シテハ認知ノ当時父又ハ母ノ属スル国ノ法律ニ依リテ之ヲ定メ其子ニ関シテハ認知ノ当時子ノ属スル国ノ法律ニ依リテ之ヲ定ム
認知ノ効力ハ父又ハ母ノ本国法ニ依ル
第19条 養子縁組ノ要件ハ各当事者ニ付キ其本国法ニ依リテ之ヲ定ム
養子縁組ノ効力及ヒ離縁ハ要親ノ本国法ニ依ル
第20条 親子間ノ法律関係ハ父ノ本国法ニ依ル若シ父アラサルトキハ母ノ本国法ニ依ル
第21条 削除(昭和61年法84)
第22条 前9条ニ掲ケタルモノノ外親族関係及ヒ之ニ因リテ生スル権利義務ハ当事者ノ本国法ニ依リテ之ヲ定ム
第23条 後見ハ被後見人ノ本国法ニ依ル
日本ニ住所又ハ居所ヲ有スル外国人ノ後見ハ其本国法ニ依レハ後見開始ノ原因アルモ後見ノ事務ヲ行フ者ナキトキ及ヒ日本ニ於テ後見開始ノ審判アリタルトキニ限リ日本ノ法律ニ依ル
第24条 前条ノ規定ハ保佐ニ之ヲ準用ス
第25条 相続ハ被相続人ノ本国法ニ依ル
第26条 遺言ノ成立及ヒ効力ハ其成立ノ当時ニ於ケル遺言者ノ本国法ニ依ル
遺言ノ取消ハ其当時ニ於ケル遺言者ノ本国法ニ依ル
第27条 当事者ノ本国法ニ依ルヘキ場合ニ於テ其当事者カ2箇以上ノ国籍ヲ有スルトキハ最後ニ取得シタル国籍ニ依リテ其本国ヲ定ム但其一カ日本ノ国籍ナルトキハ日本ノ法律ニ依ル
国籍ヲ有セザル者ニ付テハ其住所地法ヲ以テ本国法ト看做ス其住所カ知レサルトキハ其居所地法ニ依ル
地方ニ依リ法律ヲ異ニスル国ノ人民ニ付テハ其者ノ属スル地方ノ法律ニ依ル
第28条 当事者ノ住所地法ニ依ルヘキ場合ニ於テ其住所カ知レサルトキハ其居所地法ニ依ル
前条第1項及ヒ第3項ノ規定ハ当事者住所地法ニ依ルヘキ場合ニ之ヲ準用ス
第29条 当事者ノ本国法ニ依ルヘキ場合ニ於テ其国ノ法律ニ従ヒ日本ノ法律ニ依ルヘキトキハ日本ノ法律ニ依ル
第30条 外国法ニ依ルヘキ場合ニ於テ其規定カ公ノ秩序又ハ善良ノ風俗ニ反スルトキハ之ヲ適用セス
第31条 本法ハ夫婦、親子其他ノ親族関係ニ因リテ生ズル扶養ノ義務ニ付テハ之ヲ適用セズ
本法ハ遺言ノ方式ニ付テハ之ヲ適用セズ但第27条第2項及ビ第28条第1項